犬映画のセオリーを無視 『わさお』錦織良成監督インタビュー
「薬師丸さんと初めてお会いしたときに、『わさおは僕たちの言葉も気持ちも汲み取るから、本当に優しい気持ちで撮らなければならない』と約束したんです。わさおの前では、わさおの演技ができてないとか言わない、そう思わないこと。形としてとりあえず動いてもらうのではなく、心からわさおにいい演技をしてもらいたいと思いながら現場で動く、というかなりアナログな体制をとりました。そこには、ペットとして、動くぬいぐるみのように可愛がる人たちに対しての、柔らかい戒めも入っているのですが、人間と犬の対峙、わさおも犬としてそこに存在しているというのを尊重したうえで人間が見てあげるという。もし、わさおの姿がすごく自然体に感じられたら、それは一同がわさおを信じて撮ったおかげかなと思います」。
そこで監督が打ち立てたスローガンは「わさおのNGカットはなし」!多い時には一日5、6時間わさおのためにカメラを回し、全く動かない時は2、3時間待ち続ける。わさおの撮影シーンだけで55時間にも及んだ。「お手もお座りも無理なので、我々がわさおに何かをやらせるというのは到底無理で。
わさおが寝るシーンでは全部待ってますから。だから、思っていた画が撮れなくても『仕方ないな、明日撮るか』という雰囲気で現場を後にしていたので、苦労したかと言えば本当は苦労だと思わなきゃいけないんだけど、現場でそう思わないようになっていたので、気がついたら一か月で撮れきっていて。