犬映画のセオリーを無視 『わさお』錦織良成監督インタビュー
動物だからテレパシーみたいなものが伝わるんじゃないでしょうかね、最後の一週間は『台本を読んでたんじゃないの!?』と思わせるくらい、ミラクルショットの連続で、3、4割のシーンは最後の一週間で撮れてるんですよ。諦めずにカメラを回した、無欲の勝利ですね」。
犬と人間でも「気持ちは通じる」
この“自然体”へのこだわりは、わさおだけでなく、鯵ヶ沢町で暮らす人々を演じる周囲のキャストにも伝播していった。わさおの飼い主、菊谷節子さんを演じた薬師丸さんもそのひとり。スクリーンに映る薬師丸さんの目には、本物の“愛”がこもっている。
「実際の節子さんは、多くを語らないけどみんなを見守っている“日本のお母さん”のような方なんです。一日に2時間のわさおの散歩を3回もするのですが、一切不平不満を言わない。わさおがいることで自分も元気になるし、みんなを繋ぐから、そのためにもわさおが元気でいなくてはいけないという姿勢に頭が下がるばかりで。
現場で薬師丸さんとも話して、節子さんの思いのところで嘘をついてはいけないと。薬師丸さんには、演技を超えた愛の伝わる演技をしていただけたので、何も言うことはなかったですね」。
わさおを撮ることで、「気持ちが通じる」