【シネマモード】『ヤング≒アダルト』に見る、「ギャップのある女」
精神は、人気者だった高校時代から全く成長していません。問題点は客観性の欠如でしょう。彼女の言動は一貫して、徹底的に主観的。人の気持ちなど無いも同然。ちやほやされて育ったことが、こんな人格形成に影響したのでしょうか。昔のボーイフレンドが既婚であり子供がいようと私と一緒の方が幸せだと思い込み、妻を押しのけてヨリを戻そうと奮闘したり、故郷から離れずに暮らしている冴えない同級生たちを見下すかのような言動が続出します。堂々としていて自信みなぎる姿はある意味では立派ですが、残念ながら自信の根拠が実に浅いのです。
でも、そんな彼女もどこか憎めません。
その理由はきっと、彼女の中に “女の真実”が隠されているから。女性は多かれ少なかれ最も輝いていた(であろう)時代の自分を引きずる生き物であるという真実です。ただ、たいていの人の場合、「あの頃はよかった」と当時を懐かしむことがあったとしても、その頃に戻れると信じて疑わないだけの無邪気さや図々しさは持ち合わせていません。だから、当時と今を比べて少し諦めに似た想いを抱えたり、「今は今で幸せだから」と満足していたりして、十人十色の“現在”を生きているのです。ところがごく稀に、“あの頃”のまま、時間がフリーズしたような人を目にすることも。