くらし情報『この夏、出会うべきフランソワ・オゾンの究極の主題 女性を描く天才が撮る「妊婦」』

2012年8月8日 22:27

この夏、出会うべきフランソワ・オゾンの究極の主題 女性を描く天才が撮る「妊婦」

肉体的あるいは精神的に、最後までやれないんじゃないかと思ったんだ。でも僕は信じていた。彼女は信頼できる女優だからね。女優が自制心を失う瞬間はとても心打たれる。感情が本人の意思から外れてしまい、それに抵抗しようとするけど結局は諦める。この貴重でうそのない、ごく私的な部分を見せてくれるんだ」。

母になること、そこに横たわる「母性本能」の捉え方についてもオゾン流の問いかけがなされている本作。主人公・ムースの妊娠というプロセスは、「一時的な通過点、中継地点でしかない」という、その真意とは?
「僕らの社会では、母性がひどく理想化されて、すごくポジティブなイメージと結びつけられている。
でも僕は、実際はもっとずっと複雑な場合があるということを示したかった。母性本能というのはあって当然のものじゃない。ムースは自分の妊娠を、子孫を残すためのプロセスだとは思っていない。彼女にとってこの妊娠は、何よりもルイの死を受け入れるための手段であり、哀悼の道具なんだ。命を宿し、産むということが、恋人を亡くした痛みや理不尽さを和らげる手段になる。この作品は、僕にとって“癒し”のプロセスの物語さ。映画の終わりには、ムースは自分に“生きる”とか“愛する”という選択ができることを知り、ポールは自分の過去を理解して意味を見出す。

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