くらし情報『『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰』

『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰

宮崎監督は、この作品と出会ったことで「縦型の密室こそ、漫画映画にふさわしい舞台である」と気づいたという。その影響は早速『長靴をはいた猫』(1969年)の魔王ルシファーの城に活かされ、以降何度も応用・活用された。

このアイディアにはもう一つ源泉が存在する。

古い時計塔のある邸宅を舞台に起きる殺人事件を描いた江戸川乱歩の推理小説「幽霊塔」(1937年)である。アリス・マリエル・ウィリアムソンの小説「灰色の女」(1898年)を黒岩涙香が翻案した小説「幽霊塔」(1899年)を、乱歩が日本を舞台としてリメイクしたものだ。宮崎監督は、少年時代に涙香版と乱歩版の双方に強い刺激を受けたという。

2015年開催の「幽霊塔へようこそ」展では、宮崎監督自らデザインした巨大な時計塔のセットが展示され、「映画化するなら」と、一部シーンの絵コンテまで描き下ろした。「カリオストロの城は幽霊塔の子孫です」と記された自筆の解説まで展示された。


乱歩版は、吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」と同年の発行である。そこには、当時の風俗も含めて深い共振があった筈だ。

「涙香も乱歩も、時計塔の構造には矛盾が多いんです。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.