くらし情報『『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰』

『君たちはどう生きるか』作品評 理屈を超越した「漫画映画」への回帰

宮崎監督は、この結語と同様の内容を35年前に記している。

「マンガ映画はクリスマスツリーのようなもので、一番目につくデコレーションのキラキラピカピカをだれもが楽しむし、つくり手も力を入れたがる。しかし、デコレーションは枝と葉がなければつけられない。その枝葉も外からは見えない幹と根があってはじめて繁る」

(前述「発想からフィルムまで(1)」)

余談だが、本作に登場するインコ大王が率いる大群は、「クルミわり」のネズミの群れと王様を彷彿とさせる。

江戸川乱歩の「幽霊塔」と縦型の密室

宮崎監督は、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)のカリオストロ伯爵の城から『千と千尋の神隠し』(2001年)の湯屋「油屋」まで、迷路のような高層建築物を好んで舞台に採用して来た。作中ではキャクターが上下に動き回り、螺旋階段・橋・地下牢など各階層に異なる見せ場が用意される。本作にも奇怪な円筒形の塔が併設された廃墟が登場し、中盤以降の舞台はほぼその内部だ。

こうした「縦型舞台」の源泉がフランスのポール・グリモー監督の社会派漫画映画『やぶにらみの暴君』(1952年)であったことはよく知られている。

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