2016年6月2日 07:00
あの芥川賞受賞作が世界190カ国に一斉配信! ピース・又吉直樹原作『火花』のドラマ化は"平凡な奇跡"
徳永は彼に憧れ、"弟子"になり、彼の言動に振り回されてもなお、彼についていく。その魅力に説得力がなければ、物語自体が破綻してしまう。
神谷役に波岡一喜をキャスティングできたことで、この作品の成功が約束されたと言っても過言ではない。それくらい波岡演じる神谷は、狂気をはらんだカッコよさと、どうしようもない情けなさと、強烈な愛嬌が同居していて魅力的だ。まさに、「憧憬と嫉妬と僅かな侮蔑が入り混じった感情で恐れながら愛する」対象だった(「」内は『火花』原作本より)。
実際、徳永がそうであったように、視聴者である僕も、彼についていくかのように、約450分にわたる『火花』の世界に没頭してしまった。波岡はこれまで、大根仁監督の『ライオン丸G』で主演しているが、それ以外はいわゆる名バイプレーヤーとして脇を固めてきた。一時期はチンピラ役といえば波岡一喜と言われるほど、数多くの作品に出演し存在感を発揮してきた。
そんな波岡にとって、破天荒でカリスマ性のある神谷はハマり役だ。例えば、物語冒頭の花火大会での漫才のシーン。原作では、主人公・徳永のコンビ「スパークス」の漫才はウケる、ウケないの前に誰にも聞いてもらえないという切なく印象的な始まりである。