2016年7月14日 08:00
母親が、子供を預けてコンサートに行ける社会に - 演出家・平田オリザに現代エンタメのあり方を聞く
そうなったときも、文化に接するにはどうしたらいいのか。
ただ、学生は主に富裕層なんですよ。地方から来る子も少ないし、大学院に行くのは中高一貫校の出身者だったりします。みんな、頭が良いから理解はできるけれど、実感は持ちにくいようです。
――自分が失業するとはなかなか想像できないですよね。
学生たちにどうしたら共感してもらえるか考えた時に、「子育てしているお母さんが、子供を保育所に預けてコンサートに行っても、後ろ指を指されない社会」を考えてもらった方が身近になるのではないかと思いました。そう言うと、女子学生はぐっと身を乗り出して聞き出しますね。
女性の場合は、独身時代には謳歌できていた権利が、結婚・出産を経るとなくなってしまう。
そうなると少子化問題も解決しないですよね。でもいまは、女性っていうのはそんなもんだと思っている人も多い。それも「自分もそうなる可能性がある」という実感がないということではないでしょうか。
●「不条理に向き合う」ためにアートが必要
○「誰かがズルしている」という疑心暗鬼
――母親の話に興味を持ってもらうことから、失業者などの全体のことも考えられるようになると。