北野武を"異業種"時代から支える美術・磯田典宏、『アウトレイジ』に至る引き算の歴史
美術はお金かかりますからね。考え方次第で結果が違うのはよくある話なんですけど。
全部が全部100%の力でやるとお金が足りなくなるのは日本でも同じこと。ただし、「ここぞ」という時には装飾、美術にお金をかけるタイミングが絶対に来る。片目つぶって、やっちゃえみたいな(笑)。
○「監督が歩いたら終わり」の緊張感
――「アウトレイジ」シリーズでもそんな場面はありましたか?
張会長の長テーブルでしょうね。僕が最初に考えていた長さに、さらに2メートル足しましたから(笑)。最初は「これでなんとか行けるだろう」からスタートするんですよね。
大道具との打ち合わせでも常に考えていて、何度も下見をする。「予算オーバーするかもしれない」という危機感があっても、ここで2メートル足すことによって効果的になるのであれば思い切りも必要。椅子と床の敷物を増やしたりとか、別の問題も出てくるんですけどね。
ただ、ここでの「まぁ、いいか」は後々自分が後悔することになる。後悔するくらいだったら、別のセットで節約したり、調整すればいいわけです。大切なのは、「張会長をどれだけ大きく見せられるか」「空間をどのように切り取るか」です。