北野武を"異業種"時代から支える美術・磯田典宏、『アウトレイジ』に至る引き算の歴史
コメディ要素が強いからこそセットは中途半端なものではなくて、よりリアルに作り込まないと面白くなりません。ハエ男は当時の特撮技術でどれだけのことができるのかも踏まえて、こだわり抜きました。
――これまで14作を共にされていますが、どのあたりから監督が「異業種」ではなくなったと感じていらっしゃいますか?
『みんな~やってるか!』が終わって、監督は事故に遭ってしまいました。その時のリハビリで絵を描きはじめて、イラストからはじまってどんどん大きいサイズになっていって。そうやって絵を描き続けていくと、「色」にこだわりが出てくる。『みんな~やってるか!』の時は完全にわれわれにお任せというか、相談ではなくて「これでいきます」という報告みたいなやりとりでした。事故後、『キッズ・リターン』(96)は「色」へのこだわりが出た作品です。「こういう色を使いたい」みたいな、具体的な注文もありました。
――北野映画には、そうしたご自身の体験が映し出されているわけですね。その後も数々の作品を経て、『アウトレイジ』ではどのようなオーダーがあったのでしょうか。
もう7年も前ですからね(笑)。登場人物たちは黒系統の衣裳なので、寄り画の時に違いが出るように気をつけました。