北野武を"異業種"時代から支える美術・磯田典宏、『アウトレイジ』に至る引き算の歴史
『最終章』の事務所はすべてセット。セットを組んだ後、芝居の都合によっての変更案は監督からいくつかありました。
――大友がマシンガンで蜂の巣にするシーンがありますが、あれもセットですか?
あれは実際にあるホテルです。本当はスタジオで撮った方がもっといろいろなことができるんです。消え物といわれるテーブルの上のオードブルは床に落ちるとシミになるので水っぽいものは使えません。ロケセットでは、そういう制約も出てきます。
○ハリウッドスタッフ「なぜ省くのか?」
――音楽の鈴木慶一さんは監督との仕事の中で「引き算」を学んだとおっしゃっていました。不自然なもの、無駄を省いていくのは今回のシリーズでも踏襲されていると思うのですが、美術において「引き算」的なやりとりはありましたか?
『HANA-BI』(98)は、たしかにどんどん引いていきましたね。
引き算の美術。キャラクターの個性を出すには、いろいろなものを飾っていく、つまり足していくと出やすくなるし、引いていくことによって出にくくなる。引いていった場合、個性として見せたいポイントに何を置くのかが重要になるわけです。『BROTHER』もそうです。逆に『龍三と七人の子分たち』(15)