くらし情報『日本を代表する屈折男子・二宮和也が『ラストレシピ』で見せた、世の中に埋没しない魅力』

2017年11月23日 11:30

日本を代表する屈折男子・二宮和也が『ラストレシピ』で見せた、世の中に埋没しない魅力

誰もが、なんとなく、声の大きな方向に流れていってしまうなか、ほんとうにそれでいいのか? と立ち止まって疑問を発し続けることだ。かつて、倉本聰が二宮に当てた手紙でも、二宮の魅力を逆説的に語っているものがあったが、まさにそれ。

『ラストレシピ』も、ともすれば、戦争中の悲劇に「泣けました」「感動しました」(あと「美味しそうでした」とかも)という感想ばかりがついてしまう可能性もある映画になりかねないが、二宮和也の斜に構えた空気がそれを留まらせる。ほんとにそれだけ? と。それは『硫黄島からの手紙』+『拝啓、父上様』+『母と暮せば』+『青の炎』の魂でもある。

映画の宣伝で出演したNHK『あさイチ』プレミアムトークで、役者ではなくアイドルだと達観していたことが話題になったが(10月27日放送)、それもまた、彼特有の屈折ゆえの発言ではないかと思う。役者として熱くまっすぐ芝居を語ることなく、ちょっとちがう角度から真実に光を当てる。なかなかできるものではない。
巨匠はそういう若者に弱いのだ。ほんとうにニクイほど巨匠転がしである。

■著者プロフィール
木俣冬
文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。

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