2018年2月14日 11:30
『羊の木』錦戸亮、人間の混沌を映し出すような濡れた瞳が作品に生きる
たまたま顔だちが絶妙な困り顔だっただけかもしれない。それにしても、その悲しさをたたえ濡れたような瞳は、どうだ。『流星の絆』(TBS/08年)で"ぬれ煎餅"と呼ばれていたほどだ。それだけ錦戸亮の濡れた瞳には只ならないものがある。私には、従来の悲しさの表現を超越し、この世の穢れをその涙で洗い流そうとするかのような、慈悲の表情に見えてきてならない。
『流星の絆』で錦戸が演じた役は、幼い頃に両親を惨殺された犯人に復讐を計画している3兄弟の次男で、詐欺を働いている。つまり、被害者であり加害者でもある複雑な人物だった。『流星の絆』の脚本を担当した宮藤官九郎と錦戸が再びタッグを組んだ『ごめんね青春!』(TBS/14年)では、お寺の子どもにして、教師という聖職者となった極めて真面目なのだが、高校時代、学校を燃やしてしまった罪悪感に苛まれて生きている人物を演じていた。
○罪を見つめる作品で生きる
錦戸亮は俳優としてほかに、現代にタイムスリップした武士や、県庁おもてなし課でがんばる職員やら、アイドルをやりながら正義の味方をやっている変身ヒーローやら、いろいろな役を演じているのだが、『羊の木』には、『流星の絆』や『ごめんね青春!』のような、人間の"罪"を見つめ"赦し"に到達しようとする心を描いた物語で抜群に生きるように思う。