『テルマエ・ロマエ』作者ヤマザキマリさんが語る、とらわれない生き方とは? (1) 好きなことと、生きていくための仕事は分けて考える
漫画の世界っていうのはやっぱり油絵のような世界とは違うんだ、これはこれできっともっと奥が深くて面白い世界であり、そこに自分も乗っていかなきゃって。漫画でなければ展開させられない表現のワザを覚えれば、それで自分を充足させられるスキルが一つ増えたことになるし、やり始めれば大変かもしれないけど感動できる事もたくさんあるはずだろうから諦めるのはやめようと。ただ、そういう意識を持つ事ができたのは、他にもいっぱい色んな仕事してきたからなので、そんなに重々しい思いを込めてというのはなかったです。切羽詰まっていたら漫画に対するポジティブな妄想や空想で自分を酔いしれさせるわけにもいきませんでしたから。
--続けられると思われたのはいつからですか?
シリアに行って『モーレツ! イタリア家族』(講談社)という連載を取れたときに「ああ、これからは漫画だけでも多分大丈夫そうだ」っていう気がしました。私の"蛇口"というのか、つまり、今まで色んな仕事をしてきたことによって培ってきた、色んなスキルや創作法、感情の出し方、表現法が、シリアという国に引っ越した事によって、一つに集約されてしまったわけですよ。漫画という媒体オンリーに。