読む鉄道、観る鉄道 (16) 『ハチ公物語』 - 変わりゆく渋谷で語り継がれる珠玉のエピソード
渋谷駅で待ち合わせ場所の定番といえばハチ公前広場。
忠犬ハチ公の銅像があり、東急5000系アオガエルの保存車を見つめている。
そのハチ公のエピソードを映画化した作品が1987年に公開された『ハチ公物語』だ。
原作と脚本は、『大いなる旅路』の新藤兼人氏。
監督は『ひめゆりの塔』『大河の一滴』の神山征二郎氏。
本作は1987年の邦画配給収入1位となり、同年の日本アカデミー賞の優秀作品賞に選ばれている。
東京帝国大学の農学博士、上野秀次郎(仲代達矢)の家に、秋田県大館から秋田犬の子犬が送られてきた。
秀次郎の教え子が、愛犬の死を悲しむ恩師のために手配したのだ。
秀次郎の娘・千鶴子(石野真子)は喜んだが、妻の静子(八千草薫)は反対する。
秀次郎も当初は乗り気ではなかった。
犬を欲しがっていた娘の結婚が決まり、犬を誰かに譲ろうともするが、末広がりの「ハチ」と名付けた犬に情がわき、ハチを手放さないと決めてしまう。
娘を嫁がせた寂しさもあり、ハチをかわいがる秀次郎。
散歩に連れていき、風呂に入れ、書斎でともに眠る。
やがて、ハチは秀次郎の出勤時に自宅から渋谷駅まで見送り、帰宅時は渋谷駅まで迎えに行くようになる。