美しさの秘密に迫る『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』- 古川ケイの「映画は、微笑む。」#34
インドに刺繍工房を構え、駐在員を置くなど徹底した姿勢は、手仕事の美しさを熟知する彼ならではの取り組みです。ドリスは、シーズンごとに刺繍を取り入れることで、高い技術を持つ職人を保護したいと語っています。
ドリスの仕事は、洋服を作るところでは終わりません。
コレクションのショーの舞台裏では、モデルたちに自ら着付けを行うだけでなく、ポケットに手を入れるか、それとも入れないで歩くかなど細かく指示を出します。
ショーが終わっても「もっとこうすれば良かったというミスを100は思いつく」という、ドリスのストイックな姿勢がスクリーンに映し出されます。
◼︎公私にわたるパートナー・パトリックとの暮らしにも迫る
ドリスを語るうえでかかせないのは、公私ともに長年ドリスのパートナーをつとめているパトリック・ファンゲルーヴェの存在です。
ドリスとともにブランドのデザインやコレクションを担当しているパトリックは、アントワープの郊外の邸宅でドリスと共に暮らしています。カメラは3年に及ぶ取材交渉の末に、ついにその邸宅をも撮影することを許可されました。
パトリックとドリスは「私たちの家や庭や暮らしぶりのすべてを撮影に含んでもよいものか?」