美しさの秘密に迫る『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』- 古川ケイの「映画は、微笑む。」#34
と考えた末、最後には「そうした方がいいだろう」という結論に達したそうです。
そのほどまでに、家や庭、そこでの私生活が、ドリスを構成する大切な要素であることが、映画の中では時間をかけて明かされていきます。
デビュー以来、多種多様な花のモチーフを使ってきたドリス。
パトリックと暮らす邸宅の広大な庭に咲き誇る季節ごとの花々や、家庭菜園で採れるカラフルな野菜たちが、彼のコレクションに大きな影響を及ぼしていることは、想像に難くありません。
ふたりの審美眼をクリアした芸術品が所狭しと飾られ、庭園から持ち込まれた花が、インテリアにマッチする形で生けるけられていく様はため息が出るほど美しく、ドリスがプライベートにも全力で取り組んでいることが伝わってきます。
「ドリスは自宅や旅先でも細かいやることや行くところのリストと時間割を作り、のんびりできない性分なの」と明かすパトリックと、それを苦笑しながら聞くドリスの表情からは、28年連れ添ったふたりが、互いを想う気持ちがじんわりと伝わってくるようです。
本作のカメラが密着するのは、2014年9月にパリのグラン・パレで開催された「2015春夏レディース・コレクション」