『隣の家族は青く見える』3話。子を持ちたくない女と子を引き取る男、価値観の違うカップルの悲劇
父親としての責任があるから」
「婚約者としての責任は?」
亮司の言っていることは当たり前のことだ。父親として、生まれた子どもを放っておくわけにはいかない。それは父親として、人間としての義務である。ちひろは「ふたりでしたいことして、死ぬまで一緒に生きていこうって言ったよね!」と迫るが、子どもが苦しんでいるのを放っておいて「したいことをして」生きていけるとしたら、それは鈍感すぎる。
結局、亮司はちひろとの別れを決意する。
結婚式を解約すると明るく言うちひろにも声をかけない。かける言葉がないのだろう。
■亮司とちひろは何が違ったのか?
亮司はちひろの価値観を大事にしていた。
彼はちひろの考えを無理に自分に都合のいいようにねじ曲げようとしていない。ちひろを「説得」して、妻と息子、両方を手に入れようとする男もいるかもしれないが、亮司はそうはしなかった。
実は、ここに悲劇のもとと言ってもいい考え方の差がある。どうやら、ちひろは亮司を「同じ価値観の持ち主」だと考えていた節がある。しかし、亮司は「お互いの価値観を大事にする人」だった。だから、ちひろの価値観を尊重し、事情が変われば、ちひろとの別れを選ぶ。