「今の時代に能楽は絶対に必要」観るのは“舞台”ではなく、“自分の人生”だ
そして、これまで能楽を観ていない人たちにどのような社会的価値を提供できるのか、という挑戦でもありました。
※ 五流派ある能楽シテ方のひとつ、宝生流の公式団体。毎月の定期公演をはじめとする多様な公演を主催するほか、能楽の普及活動を行っている。
昨年の『能楽カフェ』では参加者からの質問に応える場面も
──昨年の企画「能楽カフェ」では「能は心を鎮める作用がある」という新しい楽しみかたを紹介されていました。
「能楽カフェ」は、ブランディングのための試みでした。といいますのも、そもそも能楽が「伝統芸能」というジャンルにまとめられているということに対して懸念があったからです。
たとえば歌舞伎と能楽では、お客様に与えるものがまるで違う。それなのに、その違いがまるで理解されていないのではないか、と。
エンターテインメントは、驚きや楽しみなど、大きな感情の揺れ動きを与えるものです。それに対して、能楽は拍手の是非が問われるほど心を落ち着けて観るもので、主役はお客様一人ひとりです。どちらかと言えば、神社仏閣に行く感覚に近いものがあります。
私は情報過多な現代だからこそ、能楽のように心を鎮めて自分と向き合う場が必要だと考えています。