「今の時代に能楽は絶対に必要」観るのは“舞台”ではなく、“自分の人生”だ
■今の時代に、能楽は絶対に必要
──宝生さんは、いとうせいこうさんとタッグを組んで舞台に映像を投影したり、スカイツリーでVJ(ビジュアルジョッキー)とコラボレーションした公演を行うなど、多方面で普及活動をされていますよね。最先端技術を積極的に取り入れている背景にはどのようなお考えがありますか。
まず大前提として、能楽が今の社会に絶対的に必要であるという確信があります。
先ほど「心を鎮める」という表現をしましたが、能楽を観ていると、自分と向き合う時間が自然と生まれます。
今の自分が本当に正しいのか、状況を捉え直す機会が作られ、自分の身に起きた良いこと・悪いことに対して一喜一憂する必要なんてないと教えてくれる場所にもなるんです。
こういった能楽の魅力を幅広い層に伝えていくために、あえてエンターテインメントに寄せたコンテンツを上演したり、能楽の持つ言葉を生かす取り組みにチャレンジしたりしています。
僕が一貫してやりたいのは、本来の能楽の良さ──アンビエントな、つまり、環境に溶け込める芸能であるという魅力を伝えていくことなんです。
東京スカイツリーで行われた「能×VJ LIVE」