くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第6話)』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(第6話)

そう言って苦笑いをした新実さんは、ロックグラスを一気に煽った。

それから、ふと思いついたようなトーンで私に尋ねる。

「昨日、一緒にいた男は彼氏か」

スーパーの帰り道、新実さんに会ってしまった私は会釈だけしてその場を離れた。

そうするだけで精一杯だった。

「関係ないでしょ」

「汐里のタイプとは、全然違うように見えたけど」

「……」

そんなくだらない話をするなら、もう用は無い。

スツールから立ち上がり、荷物を持って帰ろうとした瞬間、腕を掴まれた。

「俺のところに戻ってこないか」

「……どういう意味?」

「そのままの意味だ。よくよく考えれば俺と汐里が別れる理由は無いだろ。
結婚と恋愛は別なんだから」

「ふざけないで」

「至って真面目に言っている。今でも心から愛しているのは汐里だけだ」

何よ……今さら。

どうして今になってそんなことを言うの?

愛しているなんて、付き合ってる時でも言ったことないくせに。



動揺

動揺
出典:https://www.shutterstock.com/
逃げるようにBARを後にして、駅に向かいひたすら歩く。

すれ違う人たちが驚いた顔をするのを見て、自分が泣いていることに気が付いた。

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