【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
「その指輪って」
「ん? あぁ、これぇ? 旦那くんからのプレゼント」
「へぇ……」
「前にチラッと指輪が欲しいって言ったのを覚えていたみたい。こういうことしてくれるとぉ、疑っちゃって悪いなって思っちゃうよねぇ」
「じゃぁ、旦那さんのこと信じてあげれば?」
「それができたら苦労しないよぉ」
わざとらしく唇を尖らせた綾香は、「独身の千紗には分からないか」と呟いた。その言い方が癇に障った。
「どういう意味?」
「だって、そうでしょうぉ。結婚して家庭を守ってる女の気持ちなんて、分からないよねぇ?」
「分からないけど、それと旦那を信じる云々の話は別だよね」
「ほら、すぐそうやって論破しようとするー。そんなんだから千紗は、まともな彼氏ができないんだよぉ」
目の前のおしぼりを投げてやろうかと思った。思い込みの持論を並べて、私のことを見下している。無自覚なんだろうけど、むかつくっ!
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「すみません、こんな場所に来てもらって」
「いいえ、こちらこそ無理を言って」
綾香の旦那こと、伊野さんから「先日の件で話がしたい」