くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(最終話)』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(最終話)



会いたかった

会いたかった


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「もしもし、お母さん」

『あんた、さっきはよくも途中で電話を切って……』

「ごめん。ねぇ、大和のおばあちゃんが骨折したって本当?」

『そうよ、大変だったんだから』

「どこの病院に入院してるの?」

『○○記念病院よ』

「分かった、ありがとう。じゃぁね!」

大和のおばあちゃんは自宅で書道教室をしていて、私も子供の頃に通っていた。優しくておおらかで笑顔が素敵なおばあちゃん。私はキク先生と呼んでいた。

「キク先生!」

病室のドアを開けると、ベッドの上に座っていたキク先生が目を丸くした。ベッドサイドには……やっぱりここにいた。大和だ。


「あら、汐里ちゃんじゃない。わざわざ来てくれたの?」

「怪我は大丈夫?」

「平気よ。ほら、ここに名医がいるでしょう?」

茶目っ気たっぷりの笑顔でそう言ったキク先生は、大和の肩をポンッと叩いた。キク先生に負けず劣らず驚いた顔をしている。

「しおちゃん、出張は……?」

「行くのやめたの」

「どうして?」

どうして、だって?そんなの聞かないと分からない?1週間も放置して、電話に出ないで、挙句の果てにも消息不明になって、私がどれだけ不安になったか……。

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