お互い様と言えばお互い様だけど、むかつく!大和に会えて嬉しいはずなのに、その顔を見たら無性に腹が立ってきた。
「キク先生、ごめんね。ちょっと、大和を借りる」
「どうぞどうぞ~」
「大和、ちょっといい?」
病棟を出て少し歩くと、手入れの行き届いた中庭に着いた。人が少なくて話をするのにちょうどいい。でも、何から話そう? 怒りに任せて呼び出したけど、色んな感情が渦巻いていて整理できない。
私の後ろをずっと付いてきている大和も、何も言おうとしない。何か言ってくれたら、話しやすいのに。――――と、
「……会いたかった」
不意に後ろから抱きしめられた。
「大和、」
「すっごく会いたかった」
耳元で大和の優しい声がする。背中から伝わる体温が心地良い。それだけで、十分だった。
「私も大和に会いたかった」
「本当?」
「当たり前でしょ、好きなんだから」
「え?」
「大和のことが好きなの」
抱きしめられている腕が緩んだので、体を回転させて大和と向い合う。すると、大和は泣きそうな顔をしていた。
「ごめんね、気付くのが遅くて」
「いや……夢じゃないよね? これ」
「頬を捻ろうか?」