くらし情報『【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(最終話)』

【連載小説】理想じゃない恋のはじめ方。(最終話)

お互い様と言えばお互い様だけど、むかつく!大和に会えて嬉しいはずなのに、その顔を見たら無性に腹が立ってきた。

「キク先生、ごめんね。ちょっと、大和を借りる」

「どうぞどうぞ~」

「大和、ちょっといい?」

病棟を出て少し歩くと、手入れの行き届いた中庭に着いた。人が少なくて話をするのにちょうどいい。でも、何から話そう? 怒りに任せて呼び出したけど、色んな感情が渦巻いていて整理できない。

私の後ろをずっと付いてきている大和も、何も言おうとしない。何か言ってくれたら、話しやすいのに。――――と、

「……会いたかった」

不意に後ろから抱きしめられた。


「大和、」

「すっごく会いたかった」

耳元で大和の優しい声がする。背中から伝わる体温が心地良い。それだけで、十分だった。

「私も大和に会いたかった」

「本当?」

「当たり前でしょ、好きなんだから」

「え?」

「大和のことが好きなの」

抱きしめられている腕が緩んだので、体を回転させて大和と向い合う。すると、大和は泣きそうな顔をしていた。

「ごめんね、気付くのが遅くて」

「いや……夢じゃないよね? これ」

「頬を捻ろうか?」

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