【連載小説】この恋は幸せになれない?好きになってしまったのは、奥さんのいる人。
『あれからどうしてた? 僕はずっと千紗に会いたかったよ』
私も会いたかった。でも、もう……。
『様子が変だね。どうした? 何かあった?』
「うん、あのね」
迷ってないで、言わなきゃ。
「もう別れようと思う」
『え?』
「終わりにしたいの」
『千紗……』
ふと、初めて名前で呼んでくれた時のことを思い出した。こんなにも苦しいなら深入りしなきゃ良かった?止められるうちに止めときゃ良かった?ううん、きっと出会ったばかりの頃に戻ったとしても、また彼を好きになると思う。
「もう会わない」
『何となく、そう言われると思っていたよ。ごめんね、苦しい思いをさせて』
「悠真さんは悪くないよ。
欲を出した私が悪いの」
『そんな風に言わないで。千紗には感謝してる』
「私も感謝してる……今までありがとう」
『こちらこそ、ありがとう』
切るねと言って通話終了ボタンを押した瞬間、やはり寂しさがこみあげてきた。私たちの関係はもうこれで終わり。自分で決めたことなのに、涙が溢れた。
◆
日常
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悠真さんとの関係を終わらせて日常に戻った私は、仕事に打ち込むことで寂しさを紛らわせた。