【『ファイトソング』感想7話】一瞬の彗星が思い出を刻む・ネタバレあり
ようやくヒロインの木皿花枝(清原果耶)は、この先、耳が聞こえなくなるかもしれない運命を周囲に打ち明けた。
「言うとさ、口にしたら、嫌な現実がもっと本当になっちゃう気がして」
その痛切な言葉に尽きると思う。相手が理解してくれればくれるほど、滑らかな鏡にうつすように、言葉にして人に伝えれば『それ』ははっきりとした輪郭で跳ね返ってくる。
一番助けを必要とするひとたちは、時にこうして言葉を飲み込んでしまうのだと思う。
だが、幼なじみの夏川慎吾(菊池風磨)をはじめ、そんな花枝の告白を受け止めた面々が、おそらくショックを受けつつも口に出さず、安易な慰めも口にせず、ただ「分かった」とだけ表明して、めいめい一人で考え込むシーンがとてもいい。
直美、迫、慎吾、凜。花枝の思い出作りのことを理解して支えつつ、花枝が可哀想にも惨めにもならないように慎重に距離感を保っている。
見ている側としては、花枝は思い出作りの恋の相手である春樹(間宮祥太朗)にも、自分の病気のことを正直に言えばいいのにとは思うけれども、これからハンデを背負って生きていくと思えば、もう決して安易に自分の人生に誰かを巻き込めないと思っている花枝の決意も分かる気がする。