【『インビジブル』感想9話】執念が照らし出す死神の鎌
犯罪者として「リーパー」と呼ばれている内通者は、厳しくあたるように見せながらも、時には志村を案じ、時に助けの手を差し伸べてきた監察官の猿渡だった。
猿渡がリーパーであると発覚する発端が、事故死した犬飼が執念で調べ続けていた、紙ベースで残された猿渡が未成年時の古い犯罪記録だという描写が興味深い。
仮に警察官自身に関係する犯罪歴があったとしても、デジタルデータならば内部改ざんの可能性が高い。ならば紙データまで遡るという犬飼の執念は、執拗に犯罪を追う志村の刑事としての泥臭さに相通じるものだ。
物語を通じてずっとデジタルで犯罪が依頼され、匿名のまま犯罪が行われ、データが集積されていく描写の中で、最後に紙の一枚、一文が見えない内通者をあぶり出したのである。
猿渡は、志村のことを『おもちゃ』と称し、密かに弄ぶことを楽しんでいるのだとキリヒトはキリコに語る。
それは、迷い自分の不甲斐なさに怒りながら生きていく、しかし、どんな泥の中でもある種の清廉さを失わない志村の生き方に対する歪んだ憧憬なのではないか。
志村とキリコ。猿渡と、リーパーである猿渡を心の支えとしているキリヒト。
それぞれ対称のように警察官と犯罪者、善悪の境目で手を伸ばしあう二組のバディはどんな結末を迎えるのだろうか。