【『ファーストペンギン!』感想8話】一歩一歩を信じるんだ!・ネタバレあり
それは彼女が、部下たちにとっての『薄曇り』の労働の日々の中で、いつか来る、抜けるような青空の瞬間、より良い未来を語れる能力を持っているからなのだ。
浜の未来を語る明るい表情、水産の未来を語る力強い言葉。
職能やカリスマ性以上に、希望のある未来を具体的に提示する力があっての社長、『長(おさ)』なのだと思う。
その上で、どんな現場のトラブルにも「何とかするから!」と、やせ我慢を承知で立ち向かう。
このドラマには、現代のリーダーシップとは何なのかという答えのかけらが、たくさん散りばめられている。
今回、漁師たちの離反と、金融機関の貸しはがしという二つの大きな困難を乗り越えた和佳とさんし船団丸だったが、貸しはがしに対抗するためにビジネスコーディネーター・波佐間(小西遼生)の助力を得ることになる。
一見頼りになる存在だが、果たして長期的に見たときに吉と出るかどうか。
そして浜の外部から自分以上に頼りになる男性が入ってきたことで、居場所をなくしたように感じた片岡はひとり浜から姿を消してしまう。
ドラマの当初から、社会の現状に危機感や罪悪感を持ちつつも、しがらみゆえに価値観も行動も変えづらい、片岡のような中年世代の困惑と、それでも半歩ずつの前進を物語は丁寧に描いてきた。