【『大奥』感想3話】堀田真由の清冽さが描く痛みのリアル
家光の側室候補の男たちのように、序列にこだわり自分より弱い者を見下そうとする者。
玉栄のように、大切な存在を守ろうと奔走して自らを奮い立たせる者。
そして有功のように、慈愛と赦しで自分が今ここにある意味を求める者。
少女の無理矢理切られた髪と奪われた本当の名前は、傷つけられた身体と魂の尊厳の象徴であった。
彼女が奪われてしまった長い髪を自らが身につけ、似合わぬ姿を恥じずに晒すことで有功は彼女の心身の傷に共感しようとする。
千恵という本当の名で呼びかけることで、彼女に尊厳の灯火をともす。
互いの傷ついた魂を寄せ合い結ばれた2人を、その幸福な時間を今はただ見守っていたいと思う。
今回の最後で春日局(斉藤由貴)が有功に宣告し、次回予告でも仄めかされた通りに、人の業をこれでもかと描きこむこの名作は、そんな「めでたしめでたし」を簡単には許してはくれないのだが。
ちなみに終盤にちらりと出てくる吉宗と村瀬のやりとりで、村瀬が記録に書きこんだ「それは二羽の傷つき凍えた雛が、互いに身を寄せあうがごとき恋」の一文は、2人が固く抱擁しあう、原作全体を通しても名場面中の名場面の美しいト書きである。