就職活動中の女子大生が困っていると… 見知らぬ男性の『行動』に、胸がじんわり
駅を出てとりあえず建物の軒下に逃げ込む。駅から面接場所までは徒歩五分。しかし見た目より雨が強い。途中逃げ込めるような軒下もない。この雨では会社に到着する前にリクルートスーツが水浸しになる。近くに傘を買うところもない、どうしよう。
降りしきる雨と空を見上げながら、予報を外したお天気キャスターの顔を思い出して、恨めしく思う。お天気キャスターは全く関係ないのに、弱り目に祟り目とばかり、大氷河期の就職活動の辛さが改めて感じられ、泣きたくなる。
しかし泣いている時間はない、面接まで時間がないのだ。とりあえず走るか。と意を決して軒先から出ようとすると、
「傘、持ってないの?」
よほど私が困った様子だったのだろう、スーツ姿の男性がこちらを見ていた。
「その様子だと就職活動だよね。どこまで行くの?」
今なら見知らぬ人から声をかけられたら、とにかく逃げるのが正解なのだが、二十年前の当時は渡りに船とばかりに正直に行先を告げた。
「あ、僕の勤務先だよ。傘に入れてあげるよ。」
なんと偶然にもその方は私が今から面接を受ける先の社員であった。地獄に仏とばかりにご厚意に甘え、傘に入れていただきつつ、道中、会社の様子などいろいろ貴重な話を聞くことができた。