電車でもめる酔っぱらいと高校男児 乗客が見て見ぬふりをしていると…
と言い訳がましいことを言う。
ー彼、どうするんだろう?
すると次の駅でその男性が降りて行った。しかし酔っ払い男は降りずに、反対側に座っていた若い女性に絡み始めたのだ。
ーああ、勇敢な彼。降りて行かないで。
心の中で情けないことを考えながら窓から外を見ると、さっきの男性が走って駅員のところに行き、なにやら告げている。駅員はさっと敬礼をして、駅舎に駆け込むのが目に入った。
次の駅に着くと駅員が2名乗り込んできて、酔っ払い男はそのまま御用となったのである。
絡まれていた女性はもちろん、乗客はみな笑顔だった。
あの勇敢な男性ももう還暦を迎え、高校生はいい中年のおじさんになっているはず。
乗り合わせた私たちはもちろん、高校生だった彼には「この国もまだ捨てたもんじゃない」と思う記憶になったことだろう。
grape Award 2020 応募作品
テーマ:『心に響くエッセイ』
タイトル:『光の国からの使者はいるんだ』
ペンネーム:かず爺
エッセイコンテスト『grape Award 2020』開催中!
2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。
第4回目となる2020年は、例年通りの『心に響く』というテーマと、『心に響いた接客』という2つのテーマから自由に選べます。