ドーナツ店に来た、もじもじする男の子 店員が声をかけてみると…?
「わあ!ありがとう!」と、お礼を言って受け取ると、中にはチョコレートのかかったドーナツがひとつ。
「これ、ひとりでお店に行って買ったの?」「そうだよ」「すごいじゃん」「へへへ」「どれどれ?」と母も私達の会話に興味津々で加わる。
デパ地下の総菜売り場のようにドーナツが並んだショーケースの前にはたくさんのお客さんがいたようだ。
もじもじしていた弟に、「どれにしますか?」と、声をかけてくれた若い女性の店員さんに「これひとつください」と、弟がドーナツを指さしながら告げると、お姉さんはショーケースの向こう側から、食べやすいようにふたつ折りにした油紙に挟んだドーナツを「はい、どうぞ」と、体を乗り出し、弟に持たせてくれようとしたそうだ。
濡れた髪にプールバックを持った男の子がたったひとつドーナツを注文すれば、お腹が減って、その場で食べるのだろうと思うのも当然だ。手を汚さずに上手に食べられるように持たせてくれようとしたのだろう。
でも、ドーナツは私へのお祝い。このまま持ち帰る訳にはいかない。
弟が慌てて手をひっこめ、「袋に入れてください」とお願いすると、お姉さんは笑いながら「あらあら、ごめんなさいね」