ドーナツ店に来た、もじもじする男の子 店員が声をかけてみると…?
と言って紙袋にいれて持たせてくれたというわけだ。
優しい店員さんに見送られながら、ドーナツは無事私の元へ届いた。泣き虫弟のはじめてのおつかい話がうれしくて、私と母は何度も何度も同じ話を弟から聞きたがった。
母は仕事から帰宅した父にもうれしそうにこの話をした。父も「そうかそうか」と母の話を聞き、「袋に入れてください」と弟がお願いしたくだりでは、手を叩いて喜んだ。弟の泣き虫はその後も暫く続いたけれど、母がその事で頭を悩ませることはなくなった。
弟の成長を優しく見守ってくれた店員さんの話は30年以上たった今でもまだ我が家の話題に上る。そして、弟は同じように泣き虫な男の子の父親である。
grape Award 2020 応募作品
テーマ:『心に響いた接客エッセイ』
タイトル:『泣き虫弟とショーケースの向こう側』
作者名:森平 久美子
エッセイコンテスト『grape Award 2020』の審査員が決定!
2017年から続く、一般公募による記事コンテスト『grape Award』。第4回目となる2020年の審査員には、grapeでも人気の漫画『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』シリーズでおなじみの漫画家・松本ひで吉さんが決定しました。