箱石さんがここに「理容ハコイシ」をオープンしたのは、昭和28(1953)年8月13日。
「開業のときの借金の返済と、子どもの教育費を稼ぐために、もう、無我夢中で働きました。それで、気付いたら100歳を超えてた(笑)」
理髪店は、集落の住民の憩いの場でもある。箱石さんが「皆、親戚みたいなもの」と話す、常連客でもある友人たちが、それぞれ手作りの漬け物やお餅を持ち寄っては、おしゃべりに花を咲かせる。この日は斎藤あささん(85)、五十嵐梅さん(83)、それに屋代あさ子さん(76)が集まった。話題はやっぱり、箱石さんの若さについて。
「立ち姿、102歳には見えない。腰なんかスラッとして全然曲がってない」(屋代さん)
「おばさんは歩き方も若い。
サッササッサ歩いてる」(斎藤さん)
「私らヨッチャヨッチャだもの。歩き方みたら、私のが、おっかさんみたいだよ」(五十嵐さん)
「いや、そんなことない。私はほら、頭悪いから。年取るの忘れちゃったんだ(笑)」(箱石さん)
やがて、会話のテーマは長寿の秘訣に移行して――。
「見習って長生きすっぺと思うけど、難しいね」(屋代さん)
「運動もしてるでしょ」