2019年10月7日 11:00
太宰牧子さん「乳がん確率7割。遺伝性と診断された私の選択」
すぐさま左胸の全摘手術をし、同時に転移していたリンパ節の切除もした。このとき、遺伝性がんの検査をしないまま、最初の病院で、温存手術で済ませていたら、乳房に繰り返しがんを発症する可能性もあった。
「姉が発症前にこの検査をできていたら、リスクを最小限に抑えられたかもしれません。遺伝性乳がん卵巣がん症候群は常染色体優性遺伝形式(※)。親から子へ遺伝する確率は50%です」
徳子さんが遺伝性だったかは不明だが、妹は検査の結果、陰性だとわかった。太宰さんは、甥や姪にも、自分が遺伝性がんであること、遺伝学的検査のことを話している。
「子どもに、すべて話すのは酷かもしれないとも思いましたが、姉の壮絶ながんとの闘いを目の当たりにした彼らが、遺伝性がんについて、間違った知識を持つことのほうが怖かった。他人の曖昧な発言をうのみにして、恐怖を感じてほしくなかったんです。
ただ……、私が乳がんになったと聞いて『死んじゃうの?』って、うっすら涙を浮かべた子どもたちのその顔は、忘れることができません」
乳がんの手術を受けてから、太宰さんは、さまざまな乳がんの患者会に出席するようになった。そこで気づいたのが、遺伝性ということへの差別感情だ。