2019年10月7日 11:00
太宰牧子さん「乳がん確率7割。遺伝性と診断された私の選択」
「同じ乳がんなのに、空気が違うんです。『遺伝性なんてかわいそう』になっちゃうんですよね」
「遺伝性だと、結婚するのは嫌だってことにならない?」「子ども、いるの?産むの、考えちゃうでしょ」などと、平気で言う人もいた。逆に、遺伝しないがんなのに、「うちはがん家系だから」と、言う人は普通にいた。
「遺伝性ということは、人に言ってはいけない。現状の日本は、そんなレベル。だったら、当事者同士で、気にせず話せる会をつくりたいと思いました」
こうして’14年に誕生したのが、当事者会「クラヴィスアルクス」だ。意味は「虹の世界を開ける鍵」。同年、太宰さんは近畿大学で行われた遺伝カウンセリング学会の市民公開講座で遺伝性がん当事者として登壇した。
「そこで『名前は言わなくていい』と言われて、私は本名ではなく『患者さま』でした。でも、患者さまって言われるのが、すごく嫌で」
太宰さんは、当時の主治医と、こんなやりとりをした。
「なぜ、名前を言えないのですか」
「何が起きるかわからないし、遺伝で差別を受けるかもしれない」
ここで太宰さんに火がついた。
「差別上等です!そんなことを気にしていたら、医療者や私たち当事者が、差別を助長していることになりませんか」