2020年4月23日 11:00
「戦争なくなれば映画いらない」大林宣彦さんの「反戦への思い」
だからいつも命懸けで、遺書のつもりで映画を撮り続けているのです」
黒澤監督は、「愚かな人間は、戦争をすぐ始められるけれど、平和を確立するには少なくとも400年はかかるだろう」と、大林さんに向けて語り続けたという。
「『俺があと400年生きて映画を作り続ければ、俺の映画できっと世界を平和にしてみせるんだが、俺はもう80歳だ』と話す黒澤監督に年齢を聞かれたので、50歳だと答えました。すると黒澤監督はこう言いました。『そうか50歳か。ならばきみは俺より少しは先に行けるだろう。そしてきみが無理だったら、きみの子どもが、さらにはきみの孫たちが、少しずつでも俺の先の映画を撮り続けてほしい。そしていつか俺の400年先の映画を撮り続けてほしい。そのときにはきっと映画の力で世界から戦争がなくなるぞ。
だから俺たちの続きをやってね』」
“世界のクロサワ”の遺言を胸に、大林さんは反戦をテーマに映画を撮り続けてきた。
「本当に世界から戦争がなくなったら、映画もいらないんです。これは、みんなが健康になったらお医者さんがいらないのと同じ。戦争がなくなったら、平和を作れる映画というメディアもいらなくなる。だから映画がいらなくなる日を夢見ながら、僕は今映画を作っているのかもしれません」