藤井聡太七段「将棋教室の恩師が語った“天才”の少年時代」
将棋の才能はずば抜けていた。
「1年で20級から4級に昇格した子は初めてでした。スランプや壁などはまったくなく、日を追うごとに吸収して、ほかの子の何倍も早く、強くなっていきました」
強さの秘訣の一つが負けず嫌い。4歳年上の兄も教室に通っており、兄弟ゲンカもすごかったそう。
「年の差もあり体がふたまわりも大きかったお兄ちゃんに、ちっちゃい聡太くんが『ウーッ』とうなり声をあげて向かっていくんです。絶対、『参った』なんて言いませんでしたね。最後はお兄ちゃんが『わかった、わかった』となって、やっとケンカが終わる感じでした」
大好きな将棋となると、さらに負けず嫌いは高じ、負けたときは悔しさのあまり泣きじゃくった。
「小学生名人戦の愛知県大会に出場した際、優勝候補で小学2年生だった聡太くんは、関東から来た子に負けて、優勝を逃してしまったんです。
このときの泣きっぷりは最大の号泣でした。何分、続いたかなぁ……。このまま泣かせたら、体を壊してしまうのではないかというほどの号泣でした。そんな聡太くんを黙って、ギュッと抱きしめてあげたのが、お母さんでした」
藤井七段は教室内では当時通っていた7〜8人の子どものなかでも、とても活発な少年だった。