2020年8月14日 11:00
林家木久扇の死生観「くだらない落語が自殺を食い止めた」
「『笑点』もリモートになっちゃいましてね。でもYou Tube始めたり、コロナ時間でもあんまり暇ではないんですよ。82歳にして元気だって?笑ってくれたらいいんですよ。いろいろやって、ときにはバカやって、自分も一緒になって笑うんです。それでひと様の命、助けたこともあるんだから。認知症とか、終活とか、そんなことが話題だけど、笑いとばせばいいんですよ。そうすればニッポンは明るくなりますよ――」
世界一の長寿演芸番組『笑点』の人気者「木久ちゃん」こと、林家木久扇さん(82)は今年、落語家人生60年の節目を迎えた。長い落語人生、印象的だったことはたくさんある。
そんななかでも、“人の命を助けた”エピソードを話してくれた。
「そうそう、大袈裟ですけど、落語で人助けができたこともあるんですよ」
それは01年10月、急逝した三代目古今亭志ん朝の告別式のあとのことだった。
「葬儀のあと、用事があって地下鉄に乗って。すいた地下鉄の車内で僕、落ち込んでたんですよ。志ん朝さんと僕は1歳違いですから。『兄さん、無理して落語勉強しすぎちゃって、疲労がたたったのかな』なんて思いながらね。すると、向かいに座ってた初老の人が近づいてきたんです。