2022年4月17日 06:00
無罪訴え94歳になったアヤ子さん支える弁護士 国を許せない思い
長男・玲緒さん(30)は言う。
「父は、番組制作会社に勤め、地元のテレビ局でけっこう活躍していたので、退職して母のサポートをすると聞いたときは『そこまでするの』と、さすがに驚きました。
まぁ、父は、入社試験で母を見初めたくらいで、母の能力を誰より評価していたんです。『また赤字だ』と、母に小言を言いながらも、母の講演や再審事件のプレゼンで使うパワーポイントをプロの腕で作ってあげていましたね」
そんな家庭の事情を察していたのだろうか。アヤ子さんが、大量の煮しめを用意して、鴨志田さんを自宅に招いてくれたことがある。
「あたいが先生を忙しくさせてますからなぁ。先生には旦那さんと仲ようしてほしいんです」
ニコニコしながら、そう言った。
「アヤ子さんは、温泉で冤罪事件の支援集会が開催されても、温泉には目もくれず、ひたすら『あたいはやっちょらん』と訴え続け、『鉄の女』と呼ばれていました。
何年たっても、初対面のときと変わらず、私とは無実を晴らしてくれる弁護士として向き合い、軽口や無駄話はほとんどしない人です」
再審への強い執着が、アヤ子さんを激しい人に見せていた。
「でも、本来のアヤ子さんは、煮しめを作ってくれたときのような穏やかでにこやかな人だったんだろうなと思います」