2022年4月17日 06:00
無罪訴え94歳になったアヤ子さん支える弁護士 国を許せない思い
その家族が冤罪事件で崩壊した。冤罪さえなければ、いまでも家族一緒にアヤ子さんの手料理を食べ、平穏に暮らしていたかもしれないのに……」
アヤ子さんが抱える理不尽な思い、やるせなさに鴨志田さんは唇をかんだ。
■アヤ子さんは穏やかでにこやかな人だった
当時、駆け出しの弁護士だった鴨志田さんに、アヤ子さんは頻繁に電話をかけてきた。地元で穫れたという米やみかんが頻繁に送られてくる。弁護費用を払えないことを申し訳なく思っているようだった。
国選弁護であれば、弁護費用は国が負担するが、再審請求事件は、国選弁護制度の適用外。弁護団は自己負担で活動するしかない。
再審請求は、そのつど、新たな証拠を提示しなければならないが、新証拠となる鑑定を出す専門家へも、日弁連の支援事件になるまでは、支援者からの寄付金や自分の講演謝礼などから、薄謝を出すのが精いっぱいという台所事情だった。
独立し、自身の弁護士事務所を設立したばかりの鴨志田さんは、離婚案件や破産事件、会社訴訟、刑事事件と、なんでも手がける“町弁”でもあった。それと並行して、大崎事件の再審請求を続ける多忙な毎日だったのだ。
支えたのは、夫の安博さんだ。