2022年5月29日 06:00
ケーキは私の“声”不安症で話せない14歳人気パティシエの挑戦
すべては、みいちゃんに、今までどおりにケーキを作り続けてほしいと思ったからだ。
「一度だけ、みずきのスマホ画面が目に入ったことがありました。ズラーッとまだ作っていないケーキの名前とレシピが並んでいて、驚きました。そのとき、あの子の小さなころを思い出したんです。かんしゃくを起こしては家族を困らせたみずきですが、きっと私たちの何倍も外からの刺激を受け止めて、感情を爆発させていたんですね。ですから、今は、その感情をケーキ作りに反映できるような環境を用意してあげるのが、私たちの役目と思っています」
その一方で、いつも一緒にいる母親だからこそわかることもある。
「思春期になって、これまではなかった工房での変化もあるんです。今日はケーキ作りにノッてないなとか、レシピが送られてくるのがやけに遅いなとか。
中学には通っていますが、いまだに給食は食べられず、午前中だけの通学です。10代半ばの女の子の心は、たとえ病気を抱えていなくても揺れるものですよね」
先日のこと、みいちゃんの双子の兄・一樹さんが自宅に友人を連れてきた。その後、兄から聞かされたみいちゃんの言葉は千里さんに重たかった。
「私には言いませんでしたが、一樹がお友達と楽しそうに遊んでいるのを見て、『いいなぁ』と本音を漏らしたそうなんです。