「サブカル少女が、お笑い猛獣の檻に放り込まれた」清水ミチコ 挫折と転機の『夢で逢えたら』
“普通が一番”という昔ながらの考えの人たちなので、私は面白さより、勉強をして、真面目に育つことを求められていたんですね」
だから、当時、女子小学生には定番だった山口百恵や天地真理、桜田淳子のモノマネを披露するのは、同級生の前に限られていた。
「友達の前でピアノを弾いて、一緒に歌うことも。幼少期にピアノ教室に通っていたんですが、練習曲はつまらなく感じて、すぐにやめてしまったんです。でも、基礎は学んでいたので、テレビから聞こえる歌謡曲やCM曲を、耳コピで弾いてました」
忘れられないのは、中学1年生のとき。生徒会長に立候補した先輩の応援演説だ。
「真面目な口調で、ふざけたスピーチをしたんですね。みんながおなかを抱えて笑うほどウケて、会場が揺れたんです。壇上から下りるとき、バランスを崩さないように床の木目に沿って慎重に歩かなければならないほど、うれしさで足がガクガクでした」
中学校の卒業式では、卓球部の後輩2人が泣きながら駆け寄ってきた。
男子なら第2ボタンを渡す準備をするところだが、求められたのは百恵ちゃんのモノマネ。
「自分は、人に喜ばれる“何か”を持っているのかもしれないと思った体験でした」