孤独な遺体を受け入れ続ける夫婦2人だけの葬儀社の覚悟「身寄りがない方も私たちがお見送りします」
お見送り、私らだけでごめんね。でも、幸せに逝ってね……」
いっぽう、充さんの手向けの言葉は、いつも決まって「おつかれさまでした」。
「大往生だろうと、若死にだろうと、世知辛い世の中を、そのときまで生き遂げたのは間違いないんです。だから、私は故人様、みなさんに『おつかれさまでした』と」
創業からまる14年。独立の1年後に発生した東日本大震災の犠牲者も含め、これまで2千人近い人を見送り続けたきみ子さんと充さん。そう、ここはどんな遺体も温かく迎え入れ、寄り添い、そして送ってくれる。そんな不思議な、小さな葬儀社だ。
■「葬儀社、やっから」。
妻の一言で脱サラが決まった
「私は生まれも育ちも、ここなんです。じつはここ、もとは私の母の実家だったんですよ」
いわき市の好間地区にある葬儀社の事務所で取材を始めると、きみ子さんはこう言ってほほ笑んだ。きみ子さんは1961年に生まれた。地元の高校を卒業後、バス会社に就職し、バスガイドになった。
「5年間、双葉郡浪江町の営業所に、寮生活しながら勤めました。その間だけです、地元を離れたのは。その後、女性司会者を養成したい地元の結婚式場に『バスガイドなら人前で話すの、得意だろ』と誘われ、転職したんです」