東日本震災乗り越え、遺児たちが届ける「天国への進学報告」
明るい笑顔の根っこに消えない悲しみの種がある。昨年3月、2泊3日のハワイ旅行で海音さんは、新しい目標をつかんで帰ってきた。《高校で留学する》。自分でそう書いた目標の紙を、居間の壁に貼っている。
海音さんは、記者の目をしっかりと見て、「オーストリアに行って、歌の勉強をしたいの」と、夢を語ってくれた。
海音さんと同じ陸前高田市立第一中学校に通う及川佳紀くん(15)、晴翔くん(13)は、震災直後から本誌が見守ってきた兄弟だ。白砂青松の名勝「高田松原」で知られた陸前高田市も大津波で大きな被害を受けた。黒い壁となって襲いかかった津波は、自宅にいた兄弟の両親をのみ込んだ。
母方の祖父母に引き取られた及川兄弟は仮設住宅で暮らしていたが、今回、現地を訪ねてみると、昨年7月から入居が始まった県営災害公営住宅に引っ越したことがわかった。
持病が悪化し、避難直後から入院していた祖父は、2年前に亡くなっていた。いまでは祖母・村上五百子さん(74)と兄弟の3人暮らし。仏壇にほほ笑む両親の遺影が飾られていた。大切な行事がある日の朝は、佳紀くんも晴翔くんも、両親に手を合わせてから出かけるそうだ。