50歳東大主婦が卒業、進路決意の陰にあった「毒母」の存在
「あなたは私がいないと不幸になる」と言われ、安政さんも、なぜかそれに応えてしまうようになる。苦しかった。
「なぜ、私はAさんの言うことを聞いてしまうんだろうと。もう彼女が怖くて、そんな自分も恐ろしくて……。誰かの手を借りようと、心療内科に駆け込んだんです」
カウンセリングを重ねるうちに、医師は「あなたの問題の根本は、Aさんとのトラブルではなく、実母との関係。『共依存』です」と言った。この言葉が、ストンと腑に落ちた。共依存とは、特定の人間関係に過度に依存してしまうこと。
他者の好意を得ようとして自己を犠牲にしたり、他者の好意や他者自身をコントロールしたりと、互いに依存することで安心を得て、正常な判断ができない精神状態だ。安政さんは、ずっと母と共依存状態にあったのだ。
「母からは、結婚後も、夫が母の気に入らないことをしたというだけで『子どもを連れて実家に帰りなさい』と言われ続けていました。夫を取るか、母を取るかの、どちらかを迫られ、精神的に参っていた。このままでは自殺するとはっきりと感じた日、なんとか踏みとどまろうと、病院に駆け込んだのでした」