音無美紀子×樋野興夫「小林麻央さんは勇気を遺してくれた」
音無「子育てが一段落したら女優として“もうひと花”と思っていた私にとって、それは大きな挫折で、誰にも知られたくなくてコソコソ“がんの陰に隠れて”ました。まだ乳房の温存手術も確立されてなくて、メスで切り取られるのも想像がつかない。でも主人(俳優の村井國夫さん)が『(片胸を摘出し)それで女優じゃなくなっても、生きててくれなきゃ困るんです』と、医師に泣いて訴えたんです」
樋野「すばらしいご主人ですね。患者さんの抱える悩みの3分の1が治療法など医療に関するもの。3分の2が家族や職場、医師らとの人間関係の悩みです。日本の患者さんは夫婦間の悩みも多いんです」
音無「そうですか。術後、抗がん剤治療をすすめられたとき、医師の『この治療で皆さん15年も生きている』……この『も』の一言が引っかかり、先生に悪気はなくても、“がんは生きられないもの”という“現実”を突き付けられた気がしてつらかった」
手術後、音無さんはうつになり「死にたい」