2018年5月7日 11:00
角野栄子さん 5歳で別れた母が「魔法の世界」をくれた
「当時、お盆になると門口で迎え火をたくんですが、そのとき父は、『タンスの位置が変わりましたから間違えないよう、お仏壇まで行ってください』なんて言うんです。すると、お線香の煙にのってきた母が家にいるのを感じる。見えないけれど、いる。だから、その数日間は、いい子になってたり(笑)」
遅いデビューだった。結婚と出産を経て、2年間のブラジル暮らしの経験をベースに書いた第一作『ルイジンニョ少年』が出版されたのが35歳。『魔女の宅急便』が世に出たのはさらに15年後の50歳のとき。魔女という存在からは大切なことを教わった。
「もともと魔女というのが、“こっち”と“あっち”の境い目にいた存在だったんですね。
私も、日常のすぐ隣にある不思議を切り離して考えるのではなく、リスペクトしながらともに生きたい。そう思うと、父が幼いころから繰り返し言っていた『見えない世界なんてないと思ったら大間違いだよ』という言葉がいっそう愛おしいし、母の死さえ“贈り物”はあったんですね」
不安で、悲しくて、泣き虫にもなったけれど、母の死がきっかけで死について思い、それは生きる意味を考えることにつながったのだ。