【ライブレポート】エレファントカシマシは「今を生きる」 有観客+配信で実現した31年目の日比谷野音公演
暗闇のなかに宮本の白いシャツだけが浮かび上がる。「古い曲を聴いてください……“星の砂”も古いか、15のときの曲なんで。次は部屋の中にいるときの歌」。そんな曲紹介からギターで弾き語り出したのは “何も無き一夜“!さらに続いて演奏された“無事なる男”とレア曲連発である。軽やかなリズムと牧歌的なメロディ、そんな音の印象とは裏腹に物悲しい歌詞。「こんなもんかよ。こんなもんじゃねえだろうこの世の暮らしは」。このしみったれた男の独り言も、今聴くとどこかリアルなメッセージを感じるから不思議だ。
ラストのキメもばっちり決めると、客席からは大きな拍手が巻き起こった。
と、ここでステージにはパイプ椅子が用意され、そこに宮本が座る。そして水を飲む。アコースティックギターを手にして曲を始める。これは!と思った矢先、ふと立ち上がって、さっき脱いで置いてあったジャケットを羽織る。そしてまた座り、ふたたびギターを弾いて歌い出す。真っ暗ななかで聞こえてきたのは、そう、期待通りの“珍奇男”だ。そこに冨永のキックからバンドが入ってきて、ピンクの光でステージが明るく照らされる。
足を組むこともなく、大きく股を広げることもなく、心なしか内股で座ってギターをかき鳴らす宮本である。