2019年11月7日 12:00
家族の魅力と複雑さを描く。白石和彌監督が語る『ひとよ』
血のつながっていない他人だから助けられることもある。何でもない相手だから心の奥が打ち明けられる。白石作品がこれまで繰り返し描いてきた状況がここでも描かれる。
しかし、白石監督は「でも結局は、この家族は肝心なところでぶつかってないと思った」という。「だから、ぶつかるところからでないと物事が進まない気がすごいしたんですよ。誰かが悪いことをしたとしても、誰がやったのかちゃんと顔が見えて、その理由がわかれば、安心とは少し違うのかもしれないですけど“多少のことはお前の気持ちもわかるぜ”って感じになりますよね」。その根底には、人間が面と向かってぶつかっていないのではないかという危機感があるようだ。「目の前の人の意見よりもネットの炎上を信じたりとか……この問題は『サニー/32』で決着をつけたつもりではいたんですけど、ついてまわるものなんでしょうね。
逆にいうと僕自身がネットの言葉だったり炎上に囚われつつあるのかもしれないですし……だからやっぱり人間が“衝突”する瞬間が観たいんでしょうね」
だからこそ『ひとよ』は、血のつながった者たちが、血の関係はなくても同じ空間にいる者たちが、お互いを“許し合う”わけでも、何かを“解決する”わけでもなく、衝突し、クラッシュしながら相手を“受け入れる”ドラマが描かれる。